― 回想/白翼と黄金と ―
[あれはいつの頃だったろう。
成人するより前のこと、だったから。随分と懐かしく思い出されるのは、街角の雑踏と歌声が、遠い思い出を運んで来るからだろうか───。>>139]
白隼──、ではないのか?
だって黄金は買えるけども、
良い白隼など買おうとも買えるものだはないもの。
[今よりも高い澄んだ声。店の中で盛り上がる大きな声に誘われて顔をのぞかせた少年が、彼らの話の間に割って入れば、商人たちはあからさまに胡散臭げな顔をした。どこの子どもだと互いに見交わす、それに誰も頷かなかったのは無理もない。
さては異国か、はたまた別の町の商人の息子か何かであろうと、身分を見破られずに済んでいたのは幸運であったろう。]