― 宿 ―
[家に戻るつもりだったのに、宿へと着いてしまえば
諦めもついてヴァルターと共に扉を跨ぐ。
そこには既に避難してきた者──否、避難が出来なかった者たちが数人いるようだ。
アルビンがヴァルターを見つけ>>128状況を報告するのを近くで聞いた。
一度目の雪崩と聞いて、雪崩が二度あったことをそこで知る。
この調子だと話し合いに加わっても、男がいたところで何が出来るというわけでもない。
視線をめぐらせば談話スペースの隅の机に、誰かの置忘れだろうか、煙草を見つけた。
男は黙ってアルビンとヴァルターから離れて談話スペースの隅へ行く。]
ふぅー──……。
[勝手に拝借した煙草に火をつけて一服。
冷えた肺を煙草の煙で満たし、大きく息を吐いた。**]