― 回想・半年前 ―
[幾重にもドレープを寄せたシャンパンゴールドの礼装姿は、月光を吸い、薄暗い庭園に仄白く映える。
人間を拐かし、甘い血を啜るべく生まれついた女の容貌は、目元を縁取る仮面越しにも衆目を惹いた。
美辞に紛らせ、何処の令嬢か探ろうとする紳士達を、思わせぶりな微笑で以って躱すにもとうに飽いた。
必定として伴った血子は、宴席には意も肌も添うまいと、“支障のない”範囲で何処へなりと行くよう申し渡してある。
彼の口数の乏しさが、今は恋しくさえ感じられた。
咲き誇る白薔薇を戯れに手折れば、薄絹の手袋越しに、棘が柔く肌を刺す。滲む血が花弁に印する痕に唇を寄せると、純白は一瞬にして真紅に染まり、強い芳香が漂う]
――………、
[人気を感じ振り返れば、疎ましげに独りごちる青年の姿>>135
隠し切れぬ畏怖の混じった祝辞の数々を、一身に受けていた貴人だと気づく]