[戦友との逃走劇の数日後。
決戦の傷跡も癒えぬまま、私は本部に向かっていた。
異端審問官・局長室。
命を受けた者にしか立ち入る事の許されぬその部屋に足を踏み入れるのに、躊躇いなどはもはやなかった。]
メルヒオル局長。
私はあれからずっと、彼らの事を考えていました。
魔女と共に過ごし、その文化と温情に触れるにつれて、我々の為す事は果たして正義と言えるのだろうかと、徐々に疑問を抱くようになったのです。
局長もあの場にいらしたなら耳にした事でしょう。
狂おしい程に温かく、優しい願いを……
魔女には……恨みがあります。
ですがそれは一人の人間の行為であり、全ての魔女が人に危害を加える訳ではない。そう思うのです。
私はもう、無差別に魔女を殺戮する事は望みません。
国の平和を脅かす者だけを、異端分子としてではなく法の下に裁けたならば、それで十分ではありませんか。