[うっすら残る林道ではなく、フレデリカとダーフィトを見失わないよう前を見据えて歩を進める。方位磁石も、持つ者によってはただのがらくだ。頼もしいことでと、現状一番の役立たずを自覚すればいつもの悪態も胸の裡に留め。少しずつ高くなる雑草をかき分け、見失いそうなほどの切れ間からわき道を辿るうちに、朽ちかけた診療所の裏門が見えると。]――…ああ[目を細め、今やただの廃墟と化した建物を前に思わず声が出た。]