[しばらく目を閉じて、オットーだけに聞こえる囁きで話しかけていた男は、ゆっくり目を開いた。]
俺はこの村には二度と帰ってこない。
[覚悟を決めた表情を浮かべ、一言一句はっきりと発音することで、決意を表明する。]
だけど、オットーと過ごした日々も思い出も、全部忘れない。大切に持って行く。
時々村の方角へ風が吹いている日には、俺は元気にしているとこっそり便りを送ろう。何があっても決して自分の命を投げ出すような真似はしない。
安心してくれ。
[守りたいものがある俺は絶対に死ねないんだ、と照れくさそうに付け加えると。口を強く結び、真っ直ぐ前を見て、歩き始めた。*]