[これだけ血を流せば、標的になることは不自然ではない。
狙われているなら、下手に今部屋から出るのは危険だろう。
しかし相手の正体は何だ。
扉側の壁に背を付け、今度こそ聴覚を研ぎ澄ます。
猛獣、それも、かなり大きい。足音は重い。狼の類ではない。
猛るのは隠れる気がない証拠。
我を失っている、または、力に絶対的な自信がある。
男は白いシーツを手に取ると、扉脇で息を潜めて構える。
そして黒熊が扉へ突進してきた>>135その瞬間]
―――――ッ。
[狐火で着火したその白い布を、
獣へ向かって被せるように投げる。
攻撃目的と言うよりは、唯の時間稼ぎの目暗ましであるが。
そして同時に、襲撃者の正体を瞳に焼き付けることとなる]