……私は―――…際限を知りませんよ? ああ、けれど、貴女はもう知っているのかもしれませんね。[自身の仄暗い闇も、穢れた渇仰も。知られることを恐ろしいと思ったことは無いが、彼女が知ることは恐ろしいのだろうと思っていた。けれども、それも違った。彼女はどんな知らぬ夫の側面を見つめても、やはり、隣に添い、傍に在ってくれた。博愛的な光精は特に自分自身の想い《こころ》に疎いとされる。だが、この貞淑な妻は、整理付かぬ不安を置いて、迷い続け、探し続けても、違えぬ真摯を態度で示し続けた。]