[そして]
HK-099が『ケンペレン研究所の医療担当アンドロイド』という
博士に与えていただいた役割を果たせなかったこと、
博士を見殺しにしたこと、この二つの事実は決して覆りません。
[五年前のあのとき。
博士の病状について、もっと適した治療法はあった。
可能性の話になるが、あのときすぐに博士の治療をはじめていれば、
博士は現在のような状態のまま、五年も眠り続けることはなかったかもしれない]
[だが、博士は最低限以上の治療を一切拒んだ。
そうして外部との連絡すらも拒み、今もなおこうして眠りについている。
機械である自分には、明確な判定を下すことはできないし、その言葉に権限があるわけでもない。
ただ、博士の手によって自身の中の与えられた知識は、既に現状に対する回答を導き出している。
そしてそれは、目の前にいるこの二人が出した結論と同じものであると推測された]
……。私は、無力です。