―森→カシムの部屋へ―
[日課の泳ぎを終えて城へ戻る。途中で森を走るベリアン>>42とすれ違い、言葉を交わしたかもしれない。
ベリアンと話す時は王子への不満を決して見せる事なく、社交的な態度に終始する事が多い。
…それは「因子」を持たない人への嫉妬を隠すためかもしれなかった。そして王子からEsを上回る「懲罰部隊」の権限を与えられている事。決して機嫌を損ねてはいけない相手…そういう認識から来る態度だった。
やがて、城に着くと、浴場より先にカシムの部屋を訪れた。軽くノックをすると、返事を待たずに部屋に踏み込む。咳の発作と痣が覗く身体。痛々しい姿で寝床に横たわるカシムに近寄ると、そっと冷えた手で顔に触れる。トーンを落として静かに声をかける]
辛いな。
…ここにいる連中が…一度は通る道だ。私も身に覚えがある。
安心しろ。永遠には続かない。側にいて欲しい時は遠慮なく呼べ。
欲しいモノがあれば取り寄せよう。一人じゃないさ。部屋にいる間は、何もされない…。だから目を閉じて力を抜いて良いんだ。
[そう言うと優しく抱きしめていたわりを込めてカシムに触れた。そして、眠りに着くまで見守り、静かに部屋を後にした]