ー医務室ー
[ 「いい天気ですね」と、返事が帰って来たことに嬉しくなり思わず顔を緩めた。
締まらない顔のまま、差し出された珈琲を受けとり、初めて見たその黒い液体を少し躊躇いながら口へ流し入れてみる。カフェなど行ったことは無かった。]
ー!
[初めこそ苦さに眉が動いたものの、3口目、4口目には口に広がる香りと味が楽しめるようになった。]
...今度暇な時はカフェに行くのもいいかもしれない
[そう呟いて、彼はハッとした。これは久々に人と話す機会なのではないだろうか。とりあえず医務室の事務的印象を払拭したい、そう思いまた苦手な世間話を試みる。情報という波を脳内でサーフィンするように、話題を探す。とはいってもほとんどの波は本の物語だ。何か無いだろうか...そう考えてこの間廊下で聞いた話を思い出す。]
ラグナロク、って知ってる?
僕はたまたま耳にした程度しか知らないけど、なんでもすごい兵器だとか化け物だとか、いろんな話があるよね。君は何か知ってーー
[失敗した!
つまらなかっただろうか、彼女の表情はあまり変わらない。激しく後悔した]
ご、ごめん、引き留めたね。
とりあえず薬はそれで全部だから、また来週ね!
[そういって、いそいそとデスクワークに戻る。]
ーあぁ、また事務室になった...