― 5年前・ベルサリス学館 ―
[キール。偽名として選んだ其の名前を口にする時、
彼は何処か居心地悪そうな顔をする>>69。
おそらく、此方の正体の幾許かは知っているのだろう。
そういう眼差し。
自分の息子だから困った時は頼れと、
ジョセフ・ジェフロイ氏からは言い含められていた。
こういった議論の場でも、気が付けば中心に立っている。
リーダー的資質を備えた学館の年長者。
頼りになる、――…そう、兄が居ればこのような人物なのだろうと
思いもした。ゆえに、些細な悪戯心も交えて、
ロイ兄様と呼ぶことにしたのだ]