[目深におろしていたフードがずり落ち、ベリアンの呪われた素顔を晒す。
とっさに追撃を避けるべく”門”へ向かって死霊馬を走らせ距離をとりながら、胸に手を置いてベリアンは呪文を唱えた。]
朱の鈍み星のごと潤味帯び
光る。聞く、この暗き壁ぶかに
くれなゐの皷うつ心の臓
刻々にあきらかに熱り来れ。
[それは、外へ向かう魔法ではない。
一時的に傷の痛みをブロックし、行動の妨げとならないようにする魔法──「裁きの遅延」
治療魔法ではないから、今この瞬間も鮮血はローブに染みを作る。
魔法効果が切れた後には一気に痛みが襲って来るが、背に腹は代えられぬ。]