[2階へ上がれば『佐野』の部屋に入る前に『潮風』の部屋をノックして、中へ入る。
ノックの返事は勿論無いし、中から出迎える人もいない。
ベッドに横たわったままの彼女の枕元に日記を置こうとして、少し考えた後に]
ごめんなさい、このページだけいただきますね。
…ありがとうございました。
[彼女が書いた診療所の場所のページだけ切り取ってから日記を置いた。道ならもう覚えていたけれど、それは感傷に近い何かだったのかもしれない。
ベッドの横に膝をついて、冷たく固くなった彼女の手を両手で覆うようにして]
約束、守れなくてすみません。
[それは死なせない、という約束。]
でも、もう一つは…守ってみようかと思います。
本当は一度どうでもよくなったんですけどね。
…約束だから仕方ありません。
[小さく笑ってそう言って。]