─ ウェルシュ王子と ─
[ 第二王子の居室を訪れた際、
扉のうちからは彼の声があった。
名前を呼ばれ、何故か苦笑めいた表情と
そして張り詰めた声と共に、幾らかの労いを]
……いえ。
誰かがやらねばならぬことですから。
そうですね。
この騒動が早く解決することを願います
[ そう告げつつも、
どこか、硬い表情を崩さなかったのは
軍に蔓延る噂を、どこかで
棄てきれない自分がいたから。
『この事件は、ウェルシュ王子派の陰謀だ』
目の前の王子がそういう人物には思えないが
同様に、王宮の人間を信用するなと
そう言った画家の言葉も思い起こされて。 ]