― 回想 ―
髪を?
[確かに褒美をやろうとは言った。
それきり、どちらかといえば双子より双子の取ってきた”土産”に向いていた意識は、その言葉で再び双子へと引き戻された。
鏡写しのようににこにこと、同じ顔が満面の笑みを湛えている。
二人が魔を(正確には髪を)指差し、あまつさえ切り取りに来ようかとする姿勢を見せるのに、魔は珍しく辟易とした顔をした。]
馬鹿げたことを。
[先の上機嫌とは打って変わり眉を寄せるが、土産に褒美をくれてやろうと言ったのは確かに己だ。気難しい顔のまま、魔は己の髪をひと房手に掴んだ。
さくりと見えぬ刃に切り取られたそれを、双子へとくれてやる。]