[ 避けることは、しなかった。
死ぬ気だった訳ではない。
その 唯一 の前足を使わせて、体勢を崩すことが目論見であったから。
振りかぶったナイフを、咄嗟に防御に回すも。
弾け、守れたのは精々数本の爪。
残りは、右腹に爪先が深々と突き刺さり、肉を抉り、振りぬかれる。
壁へと叩きつけられて、一瞬息が詰まる。 ]
ぐ、っ、……ぁが………
げお、るぐ……っ、
[ 腹が爆発したかと思った。
げほっ、とせり上がるままに吐き出せば、口の周りがべったりと血で濡れる。
嫌な汗がじっとりと滲み、チカッ、チカッと視界に星が飛ぶ。
身体が、燃えているのではないかとおもった。
いいや、炎の巨人と対するには、これくらいで丁度いい。 ]