

世界の平穏を祈り、調和の要たるが『巫女姫』の務めだというなら。
その、慈しむべき世界の事を何も知らぬままでいる事は、本当に正しいのでしょうか。
何も知らずに、ただ祈るだけの調和の要が紡いだものが、本当に正しい流れを作りだせるのでしょうか。
私は、幼き頃に里を出、外の世界に触れた事で多くのものを得ました。
……里にいては、得られぬ多くの掛け替えのないものを。
私は、それを失いたくないし、更に多くのものに触れたい。
そして、それを、良き祈りの糧としたい。
だから……!
[言い募るのは、休息の間に考えていた事。
ただ、里に戻りたくない、と訴えた所でそれが通るはずもないのはわかっているから。
外で暮らす内に己が内に積もっていたもの──『斎の民』の、『巫女姫』の在り方への疑問を叩きつけていた]