…若い頃に巻き込まれたんだ――アタシはね。
時代は戦争の最中、前線から押し込まれて押し込まれて
篭城するかのように逃げ込んだ街で人狼騒動だよ。
そりゃあ、同輩の絶望ったらなかったね。
……こっちは、幸い人狼の駆逐には成功したが、
旦那も、子供も死んだ。戦争にも敗けた。
一握りの仲間は散り散り、アタシは一人村に戻ったってわけだ。
[その時心に決めていたものは、
喪った者を背に生涯一人で生きる覚悟であったから、
この目の前の青年の決意とはまた別のものであるけれども。
自らの過去を口にして、一度眼を伏せた。]