[特製のパイが焼きあがるとほぼ同時、ペーターが店に戻ってきた>>128]
ん、おかえり。
[ペーターはこちらを見遣ると笑顔を浮かべ、まずは仕事と大人顔負けに、野菜を保冷庫に仕舞うのだった
彼は野菜を仕舞い終えると、近くに来て「使えるようなら」とマルメロの実を差し出してくる]
マルメロの実か……。うん、ありがたく使わせてもらうよ。
[マルメロの実を使うとなると調理に時間がかかる。でも、折角だから追加で焼くパイに使いたいとも思う]
……となると、うん。果汁でジャムを作って生地にでも練りこんでみようかな。あとは野菜も手に入ったからこれはシュトーレンの追加材料にして……。
[作るパンについて思考を進めながら、ペーターの気を遣っていそうな様子を視界に捕らえる。残念ながら、人の感情に敏い己にさりげない気遣いは通用しないのだ。
「ほら、パイならもうできているから――」と喉まで出かかったところで、しかし少女が店の中へ入ってきたのだった>>133]