[笑いながら言えば、議論の空気は薄れる。
近所にできた新しい甘味処の話題やら
新しい教師がこの間花壇で蜂に話しかけていたなど
根も葉もなさそうな噂話やらが始まった。
それに加わりつつも、キールにつられて視線を動かす。
と、此方を見ていたらしき相手が目に留まった。>>5
全体的にどこか大地の気配を漂わせる相手。
自分と年はいくつも変わらないはずだけれども、
ずっと老成しているような雰囲気を持つ人。
フィオン・ヴァイサネンと男の名を名乗っているが、
声や体つきからは女だろう、とも思っている。
もっとも、なぜそんなことを、の経緯を聞く気はない。]