[用の済んだ短剣を抜けば、 ぴしゃ。真っ赤な返り血が、白い軍服に痕を刻んだ。ぬるんだ血潮が拳を伝う。焦げ付いた軍服を支えていた指先を離す、 とさり。あっけない軽さで、事切れた躯が地に崩れた。もうその瞳が開くことはない。彼の菓子を食べる機会も。彼と他愛なく語り合う機会も。 もう。なにもない。]