―回想:数年前―
[当時はまだ、ラ・ウルタールの現国王の一人息子がいたから。
彼が王位を継ぐものと考えられていて。
兄も自分も、護衛つきとはいえ今よりは自由に外出もさせて貰えた。
考古学に造詣の深かった父親が
発掘中の古代遺跡の視察に赴いた際に、
兄と二人でくっついて行った時。
砂漠に影を落とす巨大な遺跡群に興味を持った双子は、
大人たちのやりとりを後目に、そうっと護衛を巻いて、
発掘現場に忍び込んだのだ。
大人たちに混じって、
自分達とあまり年の変わらなそうな姿を見つけて]
『こんにちは! ねぇ、貴方は何をしてるの?』
[白い頭布と黒いベールの間から、
好奇心に輝く空色の瞳をのぞかせて、弾んだ声で問いかけた。]