― サロン ―
[ノックもせずに部屋へと入る。
城の主の姿を見とめれば、胡散臭い笑みを浮かべて仰々しく一礼した。]
これはこれは野茨公。本日もご機嫌麗しゅう。
偶然公に会えるとは、何と幸福な日なのでしょうか。
[ドアを開ける前から気配は察しているし、彼もまたそのことを知っているだろう。
唇は見え見えの嘘を滑らかに紡ぎ、笑みを形作った。]
本日はシュトラウス家のご令嬢がお見えになられると言うことで。
私も同席してよろしいですか?
[言葉はあくまで問いの形を取っているが、既に下座の椅子に手をかけ、腰かけている。
肘掛けに腕を置き、両の指を腹の前で組み合わせた。]