― 1階廊下 ―[彷徨の果てに、出入り口のホールに足を向けたのは、確たる意志のあってのことではなく、白みゆく空に引かれるようにして、外に出ようとしたからに過ぎない。壁をすり抜ける、宙を漂うなど思いもつかず、一歩一歩重たげに足を引き摺って進む。律儀にも肉体を持っていた頃の習慣をそのまま引き摺るは、生真面目すぎる性格ゆえか、それとも慨嘆の重さが引力となって地に繋ぎ止めるのか。]