―― 医務室 ――
“ポール・スコット‐ダンカン”――…
そうか、ハダリーも、弾くんだな。
[自身の両手を見るトールの表情は、届かなかった何かを強く悔やんでいるようも見え。>>144
ほつり、と流れ落ちる言葉が、耳に落ちた。
青年は、ハダリーとは、それほど多く言葉を交わしたわけではない。
その語られた過去を聞き、共感するものを感じたこともありながら、それでも、いまこうして強く疑ってもいる。
対して、彼は。
言葉を交わすことも多かったのかもしれないけれど。
恐らくは、自分のように、所詮いざとなれば全て捨てていく者の、上辺の情ではなくて――…]