[それ以上は言葉を告げることなく、先程は躊躇した血濡れの掌をアデルの頭に乗せる。柔く髪を梳けば、血で汚れる前に手を離した。] 少しだけ時間をください。 そうすれば、貴方の願いは叶いますよ。[アデル、と唇の形だけで初めて名を呼んで、穏やかに微笑んだ。声が震えてしまいそうになるのを奥歯を噛みしめることで堪えながら、近づく幼子へと歩み寄る。後ろで憂う少年へ振りかえることは、もうなかった。]