― 回想:緊急事態前第2エリア―
……もう!口が上手なんだから!
ふふ、ありがとう、カレルもカッコいいわよ。
[かわいいなぁと言われ>>44、さっと頬に朱が走る。
でもやはりマーティンに甘えるようにはいかなくて、精一杯の虚勢を張った。
耳が真っ赤だろうから、バレてしまっているのかもしれないけれど、そうやってさらっというのはずるくないですか?
それでもカレルと話しながら、無意識に詰めていた息をほぅっと吐きだす。
そして、どうにかこうにか、いつもの調子で言葉を返す。
カッコいい……と言いながらも、どこか可愛らしさも感じていたのだが、青年に言うべき言葉ではないだろうと、特に何もいう事はなく。
彼の過去は知る由もなかったから、それが女性であるとは気付く余地もない。
しかし、纏う雰囲気が柔らかく、雪の上の陽だまりのような、ひっそりと誰かを温めるような彼の笑み。]
睡眠薬?
……ああ、そういうことね。
そうね、顔色、あまりよくないわ。
[避けられなければ、そっと彼の目元を撫でて、そう呟く。
そっと避けられても、それには気付かない振りをして、会話を続けるだろう。
出来たならその話を聞いて、どうにか助けになってあげたかったけど、悪い夢と濁す彼の言葉>>45 を聞けば、それ以上追求できるはずもなく。
……そして、教育を受けた専門家ではない自分に、それほどの能力がないことも十分に自覚していたので。]