―大広間―
[掛かった声に、驚きながら顔を上げた。]
ええと……ヴェルザンディ……さん……?
[彼女の言う通り、話すのは初めてだが、何度か教会の礼拝で姿を見かけたことがあった。
その時牧師様が、名前を教えて下さっておりました。]
牧師様は……恐らく、最後まで、町の方々に声がけをして回るおつもりなのだと、思います……。
私が同行を申し出ても、断られてしまいましたので……。
でも、貴女がここに来られて本当に良かった。
牧師様の……父のしたことは、無駄ではなかったのですね……。
[そう、微笑もうとして……駄目でした。
元々笑うことが苦手な性質と、牧師様のことが相まってしまって……今自分がどのような表情をしているのかすら、私には分かりません。]