[その時、尚書官長補佐…今は代理官長だっただろうか、彼が一緒に居るのは確認できなかった。
(物陰で見えなかったのかもしれなければ、俺がそこまで確りと見る気がなかったせいかもしれない。
…或いは、その一瞬は何かしらの理由で席を外していただけかもしれない。)
兎角、「一緒に居る」、と言った彼がそこに居ない筈はなかったのだが、俺はそれを知る訳ではなかった。>>143
だからこそ、苦々しい気持ちは変わらないまでも、会いに行こうという気を削がれる事はなかったのだ。
この時、未だ俺は何かしら害する気持ちは微塵もなかったから、飄々として中庭に歩いていったのだ。
…羽撃きの音を、伴って。]