― アレイゼル領 ―
[領主在領中のアレイゼルは、その頃普段より厳しい巡回体制が敷かれていた。
戦時下である上に、解放軍との会合は、当然非公式だ。平時よりも厳戒になる。
然し貴族諸侯が、平時から他領に耳目を忍ばせるのは日常茶飯事の事であるし、必要以上に斥候潰しに気を取られる事は到底無理がある。
つまりそれらはアレイゼルへの潜入及び水面下での調査は、可能という事。
優秀な将兵、斥候ならば、それらに対する造作は何もないだろう。
減税政策にそこそこの物資により、民の機嫌は多少取られているが。
然し解放連盟の熱気が伝わり、若い世代を中心として領民の中に、反領主、反王府的気風の声は、決して無い訳では無いのだ。
それらの、極論、漏れてもいい程度の情報を探り、帰還する程度は大した造作ではないだろう。
但し、必要以上の深入りをしてしまうその場合には、話はまた変わるのだが…]