― デメララ・収容施設 ―
[語り出した若き解放者の言葉に、人々は耳を傾ける。
怒鳴っていた男も、小娘と思っていた相手が纏い始めた強い気配を感じてか、口をつぐんだ。
人々は黙ったまま言葉を聞き、聞き終えてもやはり沈黙していた。
先ほどのようなざわめきは無い。
互いの顔を見合わせて、息を潜めるような空気が続く。
そんな人々の間を抜けて、前に進み出た男がいる。
別の者に支えられながら歩く、年老いた男だ。喉に大きな傷跡があった。
声を無くした老人は人々と解放しにきた者たちの間に立ち、体の前で小さく素早く指を動かした。]