― 廊下 ―
おや、またちょっかいをかけられたのですか。
ヴィンセント公はいい反応を返してくれるから、兄君もつい手を伸ばしてしまうのでしょうね。
[ヴィンセントの言葉を聞いて、くつくつと喉を鳴らした。
言葉に合わせて手を伸ばすも、彼の身体に触れる前に気配が離れて行く。
それが当然だというように微笑んで、大仰に肩を竦めて見せた。]
ご安心ください。
安易に呪を振りまくような、愚鈍な真似はいたしませんよ。
[特別と異質は違うことを忘れてはいけない。
吸血鬼は、脆い人間に比べればずっと、自己治癒能力に優れている。
代償を支払ってまで血を欲するなど、愚の骨頂だ。
いくら珍しかろうと意味がない以上、それはただのゴミだった。]