[そのまま、車椅子を漕いで訪ねた場所は、自分が立てなくなった日――いやもしかしたら全く同時に、意識不明となった少年の眠る病室。
膝の上には小さなプリザーブドフラワー。
花瓶に花を飾ってくれる人は他にいる>>100
自分は世話に気を遣わなくていいものを持っていこうと。]
……さっちゃん。
[躊躇うことなく、眠る少年の手を握る。
なぜだろうか、触れてはいけないと思っていたのに、今は握り返してほしいとすら考えている。
勝手だと少年は思うだろうか。
それとも変わらず笑ってくれるだろうか。]
さっちゃんに、言いたいこといっぱいあるんだよ。
ずっと避けちゃって……旧ロー・シェン邸で逃げちゃってごめんねとか、わたしに料理教えてとか。
それから、わたし、…………。
[口を噤んだ。それこそ目が覚めてから言うものだと。]