[身体の中を巡る風は魔回路を開き、四肢に風を纏わせ、敏捷性を上げる。
互いの着衣と、髪が風にはためき、己の剣にも力が篭る。>>116
彼の身体が限界に近いのは理解していた。>>118
使徒が血に穢れ、長く動いていられる筈も無い。
放っておいても、やがて自我を崩壊させ、肉体が木偶になる。
先駆者になると云う事は、自ら十字架を背負うに他ならない。
だから、本当に利己的に振舞うなら、
彼に背を見せ、逃げることが賢い選択だった。
―――しかし、そんな不実を選べるはずも無い。
誇り高き騎士を―――、いいや、我が友を。
野垂れ死に、息絶えさせ、彼の全てを踏み躙る真似など出来る筈もなかった。]