[いまだ動き続ける戦況は、死者を追憶する時間を長くは与えてくれなかった。
空を行き交う機影が増えた、と感じる。
それはタクマ率いる援護艦隊の水上機母艦から発進したものだった。>>111
空から攻めてくる複葉機に高射砲が火を吹く。
複葉機が身を翻すと同時に投下された爆弾は、旗艦の前をゆく帝国戦艦の甲板で炸裂し、人と甲板構造物が海へ投げ出される。
抉られた甲板では必死の消火活動が行われた。
旗艦へもまた、敵機が繰り返し接近を試み、第四艦隊空母からの味方機と熾烈な争いを繰り広げる。]
セルウィン──
[空に絵画を広げるような二機を認めて、アレクトールは小さく名を呼ぶ。
祈りはしない。視線を海原へと戻す。
互いに為すべきことをする時だ。
ウルケル旗艦が、向きを変えつつあった。]