ならず者 ディーター

─ 現在・自宅内 ─

［いつもなら、「こんなに散らかして！」と入って開口一番に言うだろう彼女も、今はそんな余裕はないらしい。よっぽどだな、と思いながら鍋を火にかけて。

蜂蜜はいるか問えば、いる、と返ってきたのでホットミルクと一緒にリーザの前に置いた。二杯目までは、「いっぱい入れたい時もあるよな」と見ていたのだが、そこから追加で幾らか入れている途中で、あ、上の空だこの子！と気がついて、慌てて止めた。］

そりゃそうだ。

［蜂蜜がたっぷり入ったホットミルクを飲んで、あまりの甘さに手元のカップを二度見したリーザに、苦笑する。よっぽど、精神的に摩耗していたとみえる。

素直に読み物をする予定だからと答えれば、ディーターにとって何か良からぬことを考えていそうな気配がした。］