―帰路―
[…はひとしきり宿泊客から巻き上げると宿を出た。]
あの金時計、いい値が付きそうだったんだがな。
なーんで返しちまったんだろうな、オレ。
どっちにしろ懐は潤ったし、十分酒も飲めたし、帰るか。
[歩き始めると、夕刻を知らせる鐘の音が響いた。]
さっきのルートヴィヒ、相当余裕なかったな…。人狼騒ぎで気が立ってるのか?
魔術嫌いは昔っからだけど、あんな風にカレルを拒絶するなんて…。
[気にすんなよ。と声をかけたが明らかに気落ちした様子だったカレルの表情を思い起こす。
同時に妖精の歌が頭をよぎり、ぶるっと体を震わせた。]
クソ、冷えてきやがった。