ん。桜の。
従華はどうした。始まってもいないのに、また飽きただのとほざくつもりじゃないだろうな?
[蒼月の周囲に他の気配が無いのを見遣り、呆れ顔で首を捻る。
けれどもすん、と鼻を鳴らしてみれば、大気に混じった異界の者の匂いは、確かに四つ。『来て』居るのは明白だ。
長い永い生を過ごす桜の魔神が、且つて水面に花弁を落とすように、そっとその心の内を零した事がある。>>124
あの時の己には、よく分からなかった。飽きたと繰り返すその心境も、望む答えも。
否定も肯定も浮かばず、そうか、と短く応じて、それきり黙って欠けた月を仰いだのは、もう随分と遠い記憶。
だが。]
頭を使い過ぎだ、寂しん坊め。
[フン、と小さく漏れた息と言葉。
蒼月にそれが聞こえたかは分からないが、緋色の獣は、にんまりと笑った。]