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彼女には「リコチェット」という名前を与えた。
わたしは子育ての経験がなく、もちろんお乳なんて出やしなかった。相談すると、村の人たちは喜んでリコチェットを育てるのを手伝ってくれた。
リコチェットは少々引っ込み思案なところがあるらしい。
わたしには強く出られるくせに、お客が来ると挨拶もそこそこに奥へ引っ込んでしまう。それはそれで可愛いものだけれど、わたしがいなくなったら彼女は大丈夫なのだろうか、と不安になることもあった。
最近は彼女よりも少し年が上の「アルバ」という男の子と仲がいいようだった。リコチェットとは正反対で、元気な子だ。何かと理由をつけては、彼女を外へ引っ張ってくれている。
彼女自身も嫌ではないように見える。わたし以外にも心を開いているのはいい傾向だろう。
この村は年寄りばかりだから、年が近い子に遊んでもらえるのはありがたい。
わたしは最近、どうにも膝が痛くて仕方がない。