――最後に『あの娘』に出逢えて、僕は幸せだったさ。
僕みたいな薄汚れた人間が、こんな良い思いして良いのかって。
だから――
もし、願いが叶うなら。
あの娘がこの船を降りるとき、あの娘が何も知らないうちに、
――そして、あの娘が二度と知ることの無いように
――僕を、僕の意識を消し去って欲しいのさ。
夢の中、二度と逢えぬ彼女のことを想い嘆き続けるなどと。それはなんと、地獄よりも酷い仕打ちだろうか?
[猫の光る双眸を覗き込み、にっこりと、寂しそうに、笑った。
――猫は、青年の問いかけに、なんと答えたであろうか?*]