[彼が抵抗を諦めるなら、もしくは、抵抗しないと確信すれば、安堵に似た溜息を零して、…やがて始めた時とは裏腹に優しく、穏やかな口付けへと変わっていっただろう…]
[どれだけそうしていたか、唾液にふやけた互いの唇の境目が蕩けて判らなくなる頃、微かな水音を立てて、ゆっくりと舌を引き抜いた。
何かを祈るみたいに唇の合わせ目に、そっと己の上唇を当てて輪郭を味わって、やがて渋々といった様子で手を離す。満足気に零す、温まった吐息が彼の吐息とまじりあった]
…――つぎは、「アイツ」が起きてる時にしてやれよ、可哀想に。
[どこか悪戯っぽく、困ったように笑う紅い眼の、その焦点が、僅かな間の後、ゆらり、揺らいで青へと戻る。
同時、ぐらり、重心が傾いて、彼の上に崩れ落ちる身体。…後に残るのは、穏やかな寝息だけ。
「ずっと眠っていたカレル」は、この愛しい時間も、この後クレステッドがどうしたかも、なにも、知らない――…*]