さて、ツィスカ殿についてである。
彼女はじつに、軍人の模範である。
こう申し上げては角が立つが、ここに来て初めて真の軍人を見た気がする。
それが彼女である。
忍従、献身、その身の苦労もいとわぬ健気さ。
その全てが、自分に足りぬものであったと、俺は我が身を恥じた。
だが、この自分に有って彼女にないもの、それは、闘争心である。
誰も疑いたくないのは隊員全てにおいて真情ではあろうが、この期に及んで、そうした感傷的な彼女の美点は捨て去るべきであろう。
なのに、昨日、彼女はソマリ殿の占いを阻もうとした。
ほかに占いの候補と挙げられていた隊員も居たのに、なぜ。
結果としてソマリ殿は「吸血鬼ではない」ことが判明したが、それを予見できたものが他にいたか?
居るとすれば、それは、誰が吸血鬼であるかを知っていた人物なのではないか、自分はその時点でツィスカ准尉を疑っていた。