…そんなんッ!
浪漫を感じひん方が男としてどうかしとるやろッ!!!
[力強くそういうと、リヒャルトにお構いなしに情けない思い出話を口にする。]
思い出すわあ。
かつて偵察と称して白狼館に赴いた時のこと。
俺、土下座してアイリちゃんに頼んでん。
ゾネス要塞内部に入らせてくださいって。
兵士には絶対に指一本触れませんって。
……言うてんけどなあ。断られてん。
いやあ、あの時のごみ虫を見るかのような冷たい視線。
さすが土地を束ねる権威そのものって感じやったわ。
ええなぁー。アイリちゃんと結婚するリーくんも羨ましいけど。
リーくんと結婚するアイリちゃんも羨ましいわあ。
あーあ、俺も後ろ盾があったらリーくんのおうちと結婚できてんけどなあ。
[冗談半分に言いつつも、背景も持たぬ自分には無縁の話を相談する男の悩みは羨ましくもあった。]