[ほどなく、城の廊下の一角で茨の蔓がうねり絡まり伸びあがった。稚拙な人型をとった茨の塊は、やがて血肉を纏って城主の似姿となる。唯一、左の踵から伸びる蔓だけが差異を残していた。] ジーク。ここを開けてくれるかい? おまえの声が聴きたくなったよ。愛しい私の月。[扉を叩き、声を掛ける。ここは彼の部屋だ。]