―回想・羊飼いと家族のこと―
[22前、冬のほど近いある日のこと。
晩秋の仄かな照りを残す日差しと、澄んだ空気の中、
一台の車が、辺りに響く音を立てて、宿の前に泊まった]
―――よお、レジーナか? 別嬪になったな!
―――オズ。すまんが、俺の家までの山道を行ける馬を、
ちょっと貸してくれや。
[10年弱ぶりに生まれ育った村に帰ってきた男は、
幾つか年下の幼馴染たちの姿に、懐かし気に黒い瞳を細め。
車の周囲に珍し気に集まる、大人や子どもを気にする様子ながら
気安い口調で頼みごとをした]