― 前線への途上 ―[ 戦場へと近付くにつれ、死臭が濃く風に混じる、その匂いが蘇らせるのは、5年前、この同じ地で、兄が命を落とした時のこと...そして、銀の月の如く煌めく大鎌の刃と、亜麻色の髪と瞳の少女の姿... ]リー...[ 叫んでも届かなかった声は、宙に浮いたまま、今もきっと、彼女を捜して風に運ばれているだろう ][ ぎゅ、と一度ミサンガを巻いた手首を握る。あの日の後も、このミサンガを外そうとは思わなかった。それが、きっと本当の自分の心だ ]