[数年前、まだ成人を迎えるより早く「熊殺し」の号を得たサシャにとって、音もなく駆ける事は難しくない。選りすぐられた同胞と共に、砦へと肉薄し歩哨をやり過ごす。得られた情報が正確なのは、知り得ている為、サシャも緊張は抱えながらも安心もしていた。]
リィグ
[随分進んだ頃、サシャは音量に注意し、なるべく小さい声のつもりで盟主の名を呼んだ。
本当ならディーク、あるいは盟主と呼ばねばならないのだろうが、耳が聞こえないため発音に難のあるサシャには難しく短くなりそれが普通となった。
そうして、遠くの見張りを指し示す。殺すか?の意を込めて見上げると返る仕草>>84に、流れるように矢を番えそして―――放った。]