おにーさん、しっかり!
[駆け寄って呼びかけたものの、どうやら向こうは答えるどころではないらしい。
一目見てわかる濡れた様子と、触れた手に感じる熱。
そこから、状況を察するのは容易かった]
おかしなとこ、打ってるとまずいし……どっちにしろ、一人じゃ運べない、か。
[状況的にも体格的にも、それはほぼ不可能で。
仕方ない、と呟いて立ち上がると、唇に指を当てて甲高い音を鳴らした。
一族の鳥使いたちが放っている猛禽を呼ぶ合図の指笛。
元々は緊急連絡手段として使われていたものだが、最近では一族の領域に近づく者への警戒の手段としても使われていた]
に、しても……。
[程なく舞い降りてきた翼に場所と、人手を寄越すように、と記した短い手紙を持たせて飛ばした後、改めて意識を無くした見知らぬ来訪者を見やり]
…………この、布と縄のお化け、なんなんだろ。
[口を突いたのは、未知の技術で作られた品への素朴な疑問だった]