― サロン ―[野茨の蔓を玩んでいた心が、一瞬過去へと飛翔する。あのとき感じた甘い電撃が身体の芯に蘇り、紅い唇が月を真似て弧を描いた。扉の外では弟と客分の彼が邂逅している気配がする。そちらをしばらく窺ってから、蔓に己の意思と力を流し込んだ。]